店長はワインを持ち込んだ客を、著名な作家である「よしもとばなな」とは気付かなかった(あるいは「よしもとばなな」を知らなかった)のだけど、その”異様な年齢層やルックスや話し方を見てすぐに、みながそれぞれの仕事のうえでかなりの人脈を持っている” 事には気づいたのではないか。ばななさんは「そういうことを見抜けなかった店長は頭が悪い」みたいな論調で店長を非難しているけれど、店長は、実はその辺の嗅覚は優れていて、ばななさんご自慢の人脈は全てお見通しだった。
しかし「私の人脈を利用すれば成功するのに!」というのは、ばななさんの思い上がったカンチガイ。「かなりの人脈」の人は、セントラルキッチンとマニュアル化によって安価を売りにする大手居酒屋チェーンなんか利用しないことを、店長は見抜いていたのだ。
つまりシートンさんの持ち込みが許容されたのは、店側の「こいつらはビンボーそうなので、ちょっとした持込くらいなら見逃しておけば、ビンボー人のレジャーとして適当に飲み食いしてくれる客を増やしてくれるかもしれない」という読みがあったからなのだが、ばななさんの持込が許容されなかったのは「コイツは人脈がありそうだけど、特別扱いしてもそいつらが店に来ることはないだろう」と考えたからなのだ。